書評より


アスキー編集長、大いにうなづく!

わたしゃ、うれしい!(by PageMaster)


『財界』97.11.18号 “Zaikai Book Review”


「しょせんパソコン」と思えば上達も早い!?

 パソコンに「極意書」のようなものはない。これさえ読んでおけば、すべてがうまくいくという秘伝を書き連ねた本など存在しない。

 そもそもパソコンには、「極意」とか「秘伝」のようなものがないからだ。パソコンを上手に使えるようになる、誰よりもうまく使いこなせるようになるということは、つまり、パソコンの世界に体を生理的に合わせていくということにほかならないのではないかと思う。田舎から都会の学校に転向して、新しい空気やルールに少しずつ慣れていくようなものである。

 その証拠に「理屈で攻めるタイプの人」は、パソコン以外では相当に優れた人でも、使いこなすのに時間を要する。たぶん、パソコンを短期的に習得してしまった人は、たとえ地獄に落ちるようなことがあっても(習得したことが理由ではないと思いますけど)、あっという間に地獄のルールに合わせてよろしくやっていくことだろう。

 本書は、いかにも「手取り足取り」の入門書といった題名だが、昨今のカラー図版ふんだんの懇切丁寧入門本とは、一線を画すものとなっている。

 目次をざっとながめてみると、「最先端マシンは、時にはくわせもの」「パソコンも、急かせりゃ怒って故障する」「基本用語いくつか知ってりゃこと足りる」「問題や故障がなければパソコンじゃない」など、いまじゃ交通安全標語でもめったにお目にかかれない「五七五調」のアフォリズムが並ぶ。

 ところが、これがパソコンを使いこなしている上級者ほど「なるほど」と、小膝を叩いてしまいそうな真実をとらえたものばかりなのだ。

 パソコン全般だけでなく、「ワープロ」「表計算」「データベース」「ネットワーク」といった、アプリケーションの具体的な使い方にもページを割いている。いわく、「ほどほどが一番ですよ(ワープロの)フォーマット」、「(表計算は)カッコより中身優先、当たり前」など。「文字だけギッシリ」の本なので、ややとっつきにくく感じるかもしれない。しかも、話のテンポが速く、やや乱暴なところもある。しかし、図版や事例では理解されにくい、微妙な勘所が、言葉で表現されているのである。

 本文の最初には、「汝のパソコンを知れ」とあり、「“ウィンドウズだマッキントッシュだ、といっても、しょせんはパソコン、みな同じ”という境地に達してしまえば、もう鬼に金棒、パソコンはあなたのものです」とある。しいていえば、これが「極意」かもしれない。

〈月刊アスキー編集長 遠藤諭〉


 「いろはにパソコン」のトビラへ 「いろはにパソコン」目次

 asahi-netのホームページ  MaCroSoftのホームページ