XPとOS X、どちらが安全か?:OS選びと安全性


MacWin王国」というサイトのお助け系掲示板「MacWin相談室(仮)」で、「購入するならマックかXPか? 」という質問がなされた。質問者は「友人に、どちらが安全かで迷っている」と相談された模様。
一連のやりとり見ていると、どうもアドバイスをする人と質問者の間に、かなり認識の開きが見られる。そこで、その隙間を埋めようと思って書いた文章が、例によって掲示板に投稿するには長くなりすぎたのでこちらに掲載。

頻繁にウィルスに関する情報に触れ、またセキュリティホールなんていう怖い言葉を見ると、不安になるのはとてもよくわかります。また、より安心なOSを選びたいという気持ちもわかります。
そこで、リスクについて、とっても素朴で基礎的な考え方をひとつ。

まず、いま現在のウイルスのほとんどがWindowsを標的にしています。
ユーザー数が圧倒的に多いので効果が大きいからだと考えられています。
Biglobeの「セキュリティコラム」で、コンピュータウイルスの種類に触れている部分があるのですが、ちょっと乱暴に言っちゃうとウイルスの全数が約6万種類。
そのうちMacに感染する可能性のあるものが約4500種類。ウイルス全体の7.5%です。
ちょっと大げさに言うと、Windowsを使用しているだけで標的になるわけです。

「Windowsでも最新のXPを使えば安心では」という考えが充分でないのは、当のMSのこの記事を見ても明らかです。
XPでタフなセキュリティを実現」(窓職人コラム No.001 高橋敏也)
この記事で言われているのは、従来のWindowsよりも「対策がしやすい」ということです。
自分で対策しなければならないという点では、従来のWindowsと同じなのです。
テクニカルライターの書いたものだけあって、ちゃんと言葉も内容も選ばれていると評価してもいいと思いますが(^^)

また、XPの特徴を機能別に紹介しているページでも同様です。
「対策しやすい」以外に、根本的な変化はないことがわかります。
有り体に言ってしまえば、MSOEなどのデフォルトの設定をいくつか変更すれば結構安心して使えるものになるのですが、その点には変更がありません。

MSOEはOSではなくてメーラーですが、OE独自の機能を標的とした無数のウィルスに狙われているのは疑いのない事実です。
端的にはMSOEとMSIEの設定を変更したり使い方を変えたり、なによりも使用をやめることで、かなり安全になります。
が、そういうアナウンスは上記の二つの記事ではまったくなされていません。
では、デフォルトの設定が安全なものに変更されたかといえば、それもされていないのが実情というわけです。
ということは、WindowsXPは、そのまま使用していると、ウィルスや悪意のクラッカーの標的にされやすいという状況は、まったく変わっていないわけです。
一部で「MSはユーザーの安全など考えていない企業だ」と言われる理由は、この辺にもあります。

こうしたことが、あまりコンピュータ系の雑誌でも報道されないのは、MSの広告料を失うのが怖いからだとか言われています。真偽は解りませんが。しかし、ネット上でだけ流れているデマでないことは、「こういうデマが流れている」とか「惑わされないように」とかいう話も出て来ないことを考えれば充分でしょう。

ユーザーが多くても、穴が少なければ、あるいは攻略しにくければそんなにターゲットにされないのでしょうけれども、すでに皆さんがご指摘のように、日常的に致命的な穴が発見されています。
穴に関する情報は、公開された瞬間に「潜在的な危険」は顕在化してしまうので、公開は諸刃の剣なのですが、ユーザーは知らなければ対処することができないので、ふつうは公開されます。

前述のBiglobeの記事ではUNIXに触れていませんが、インターネット・サーバーを標的とするウィルスの類いの場合は、最近報道などでとりあげられたものの中にもUNIXを標的したものが多少(半分足らずぐらいかな?)あることや、OSや用途を問わず、インターネットに常時接続しているマシンは一定の危険にさらされていることも知っておいて欲しい事柄です。
しかし、それでも、Windowsを使ってインターネットに接続するということは、かなり強烈に標的にされているのだということは疑いのない事実です。
ちょうど、海外旅行する日本人が「無防備でお金を持っているから」と狙われるのと似ています。
(MacやUNIXを使っていればまったく安心というわけではないので、その程度には警戒しましょう(^^)
と言っても、わたしは99年以来、Macに感染し得るウィルスに出合っていません。
Windowsを標的とするウィルス感染メールは1週間に何通かは見ていますが(^^;;)

今後もウィルスは増え続けるでしょう。
人間の作るものに完ぺきはあり得ないので、セキュリティホールは見つかるでしょう。
そうそう。
大前提としてウィルスの類いはそれぞれ特定のOSを標的にして作られます。
Windows向けのウィルスは他のOSに対して無害です。
他のOS利用者がウィルスに感染したメールを受け取っても、それを他に広げることはまずありません。
Mac OSはMac OS Xに衣替えするに当たって、中心部分がUNIXになり、ほぼまったく別のOSになりました。
そのため、UNIXを標的とする攻撃にさらされる可能性が増えたことは間違いありません。
従来の、他のUNIX系OSを標的にした攻撃がどの程度Mac OS Xに対して有効かという点を含めて、その影響がどの程度なのかはまだわかりませんが、最初のリリースから2年以上が経過して現在のような状態なら、意外に杞憂だったとなるかもしれません。
もちろん、まだまだ予断は許しませんが。
「安全かどうか」という点だけに絞って考えれば、「対策をきちんととれる自信がないのなら、Windows以外の方がまだしも安全」ということは言えるでしょう。

ただ、安全性だけでOSを選んで満足できるのかは、なんとも言えません。どれを選んでも、そのOSなりのわずらわしさはつきもので、満足できるかどうかはユーザー自身の優先度(なにをしたいか)に関わるものでしょうから。
私は、現在のMac OS X(Jaguar)にはかなり満足しています。もうちょっと旧Mac OSの使い勝手のよさを復活させて欲しいと思うこともあります、もうほとんどMac OS 9上でなにかをすることはありません。

ところで、個人的には「安全性」という点では、ちょっとした配慮で防げるウィルス被害や、事実上、よほどヒマなヤツしか狙わないであろうショッピングサイトなどでの通信時のデータ流出よりも、無防備にネットにつながっているマシンからのデータ流出が大きな問題だと思っていますが(^^;;

Posted: 日 - 7月 27, 2003 at 05:49 午前            


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