ワープロソフトって、1行の文字数を指定できないの?


例によって「Mac Trouble Hunter」(http://f38.aaa.livedoor.jp/%7Elovemac/ )の掲示板で、「ワープロソフトで、1行あたりの文字数や1ページあたりの行数を指定できないのか」というお話を見ました。
これ、しばしば耳にするところです。しかし、ソフトの機能としてコレができるものは伝統的に少ないようです。最近はそうでもなくって、指定はできるんだけど、実際にはそうならないってのもありがち。まあワープロソフトはそういうのは苦手というような感じですね。
なので、その辺ができないとか扱いがへたなワープロソフトを使う時は、テンプレートを作って、それを使い回すと便利じゃないか、なんて話もあります。
というわけで、「どうすんの」とか「なんでじゃ」とか、そこら辺をひとくさり。

■テンプレートを作るなら
まず、少しは実用的な話から(^^;;
ワープロソフトは文字の大きさをポイントで指定するようになっているのですが、ポイント数で1行あたりの文字数を決めようとすると大変なこともしばしば。寸法はミリで指定するようになってるソフトが多いから、その場合、「1ポイントは0.35ミリで、12ポイントの文字を1行に35字入れたいから、その場合は……」とか換算しなくちゃいけないわけです。後述するようにGoogleさんの力を借りたりする方法もありますけど。

なので、こんなことをすると、ちょっとは楽かもしれません。

□□□□●□□□□■ ←5文字めが●で10文字めが■
□□□□●□□□□■
□□□□●□□□□■
□□□□●□□□□■
■□□□●□□□□■ ←5行ごとに行頭が■

なんていう文字列を実際に使いたい文字数で作っておいて、これをページにコピペする。で使いたいフォントと使いたい文字サイズを指定しておく。そうすると、ぐりぐりと伸ばしたり縮めたりしてテンプレートが作りやすい……かもしれません(^^;;

■ワープロソフトではできないの?
そういうわけじゃないんですよ。こういう例もあるし(「作例2-1」ね)。多分、近ごろは指定できるソフトも増えているんでしょう。でも「指定できる」からといって、「指定した通りになる」ってわけでもない。だから「伝統的に得意じゃなかった」とはいえるでしょう。
「指定した通りにならない場合」というのは、後述するような問題点があるからでして、しかも、これらの問題点は、多分そのままなので、「指定できたって意味ないよ」ということもありそう。しかし、そこが問題になるかどうかはユーザーの要求する内容次第ですね。「ちゃんと1行が指定した文字数にならないと困る」のであれば、ワープロソフトではちょっと大変かもですね。「だいたいそれぐらいになればいい」んだったら、それを指定できる機能がありさえすれば別に大変ではないわけです。

■どーして?
「1行を40字に」とか「1ページを40行に」なんていう指定がかつてのワープロ専用機ではできたのに、それができなかったり苦手だったりするワープロソフトがあるのは、ワープロ専用器とパソコンでは使用されているフォント(文字)のデザインが根本的に違うからです。

パソコンで使用されているフォントは、1文字ずつの幅が同じになるようにはできていない「プロポーショナルフォント」です。こいつは、特に欧文や数字、記号の部分の文字幅がまちまちで、和文(平仮名、カタカナ、漢字や日本語特有の記号なんか)は文字幅が同じ(等幅)というのと、和文もまちまちというのがある。Macでは前者で、Windowsだと後者です。
ワープロ専用機で使われていたフォントは、どの文字も同じ文字幅か、その半分の幅。全角と半角なんて言いますね。こういうのは、等幅フォントといいます。
しかもワープロソフトでは、フォントによって、同じ文字でも文字幅が微妙に違う。さらに1行中に別のフォントや大きさの違う文字を混在させることが平気でできちゃう。ボールド(太字)に指定した途端に文字幅が広がったりもする。

和文の印刷は、ここ100年ぐらいは文字が等幅だったので、ワープロ専用器ではそういうふうに作るのが自然だったんでしょう。それ以前はプロポーショナルだったんですけどね。
が、ワープロソフトというのは、大元は欧米で作られたものが多い(ていうか、コンピュータはあっちの世界の発明)。で、そもそも欧文では「1行に何文字にするか決める」という発想がないみたい。例えば「i」と「W」では文字幅が全然違うのが自然だから、1行あたりに何文字にするかということを制御する気がないんじゃないか、って気もします。
タイプライターや初期の欧文ワープロ専用機なんかは、文字は等幅ではなかったりするのに、実際に文字を打つと均等に配置されるようにできていた。これは、そうするほうが仕組みを作るうえで楽だったからでしょう。そうしたかったわけではない。
でも、パソコンが発達していろんなことができるようになったら、そんな「均等」なんてことにするよりも、いろんなフォントやいろんな大きさの文字を使える方が便利なので、フォントもソフトウェアもそうなっていった、ってことじゃないかしら。

こういう「プロポーショな」か「等幅か」という話に加えて、和文だと同じ数字の5でも全角の「5」と半角の「5」があって文字幅が違うなんてこともあります。ちゃんと1行の文字数をそろえたいんだったら、これは混ぜて使っちゃいけないってことになります。

■余談:全角と半角
脇道にそれますが、この「全角と半角」って、ワープロ専用機時代の名残です。全角は、等幅フォントでの仮名漢字1も自分の大きさ。「半角」ってのは「全角の半分の幅」ってことです。印刷では、同じことを「1バイ(いちばい)」「2分(にぶ)」って言いました。
パソコンのソフト上では、この表現は実は正しくないのが、上記の「フォントによって幅がまちまち」という話からわかると思います。ワープロ専用機や伝統的な印刷とは違って、両者の文字幅が常に2:1になってるわけじゃないんですもん。
じゃあっていうので、「和文用と欧文用」とか「2バイトと1バイト」って言い方もあるんですが、実はそれでも例外的なことは多々あって、厳密に実際と合致しているとも言い切れない。面倒なので理由は省きますが。まあ、どれでもだいたいの実状を表せるので、それでいいかってなもんです。
この辺を、「ふつうの人にもわかる言い方で、厳密に正しく表現することはできない」ってのが実のところだったりします(^^;;
「どーして?」から「全角半角」あたりについては、ここなんかを読むと楽しく詳しいです。

■んじゃ、どうする?
仮に指定できたとしても、その通りにならないんだったら意味がない(そうでない場合もあるでしょうけど)。
文書の幅や段の幅が指定できないわけではないんだけど、「12ポイントの文字を20字入れられるように」と設定できても、フォントによって、あるいは出てくる文字によって実際に納まる文字数は変わってしまうのでは困るってことはあるでしょう。

てなときは、1文字ずつの幅が同じフォント(等幅フォント)を使えば、ある程度はできます。
Macの場合であれば、和文ならOsaka等幅とか等幅明朝(いまもついているのか?)、欧文や数字は和文のちょうど半分になるように作られていますね。欧文フォントでもCourieやMonacoなんかが等幅です。Windowsだったら「MS明朝」とか「MSゴシック」なんかが等幅です(「MS P 明朝」みたいに「P」がついてるのはプロポーショナルでんす)。
これなら指定した通りの字数で折り返しになるし、そういう機能がなくても12ポイント×20字なら、段の幅を240ポイントにすればいいという理屈で対応できる。
ちなみにパソコン上の1ポイントは1/72インチ=約0.35ミリなので、240ポイントは約84.7ミリ。
この辺はGoogleに計算してもらえる

しかし、行間は絶対値で示されていないソフトが多いので、これは指定できる機能がないとコントロールできないかもだなあ。指定の根本になる数字がわからないわけで(^^;;
もちろん、ほかのフォントにしたり文字の大きさを変えた途端に、1行あたりの文字数も、1ページあたりの行数も変わります(苦笑)

■どーにもならんの?
前にも少し書いているけど、国産ワープロソフトやテキストエディタの中には、1行あたりの文字数や、1ページあたりの行数を指定できるものもあります。が、本当にかっちりとした「○○字×○○行の指定」は「原稿用紙モード」ぐらいでしかできないのではないかな。

テキストエディタなんかでは、文字幅でのスケールというかゲージを表示できたり、折り返しの文字数を指定できるものが結構あります。フォントを変更したときに自動的にゲージが変わってくれるわけではないけど。
私は、その手の作業のとき(文字数を気にしながら原稿を書くとき)にはもっぱらテキストエディタを使っています。
それをページに仕上げる時は、ページレイアウトソフトと呼ばれるもんの出番です。ソフトによっては文字数で指定することもできるし、そうでなくても文字を入れるスペースを「12*20pt」なんていうふうに指定できるので、まあやりやすい。でもふつうの人が買うには高いと思います。

でも、どれにしても1行にいろんなフォントをいろんな大きさで入れちゃったら、行辺りの文字数は変わるし、行によってフォントや大きさを変えたら、ページあたりの行数が変わってしまうので、同じこととも言えます(^^;;

Posted: 木 - 2月 3, 2005 at 04:51 午前            


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