版下はどこへ


知人であるデザイナー見習いさんが、日記にこんなことを書いていた。
>一回印刷屋さんに入稿したデータ。
>追加印刷の時に、前回、版下を作成して頂いているので、またデータを渡さなくていいよね、と思っていたら。
>版下は1週間くらいしかもたず、消滅するそうで。。。
>
>なぜ版下が消えるのだろう??

「懐かしいなあ。まだ版下が使われているのかあ。データ入稿なのに、なんで?」
という人もいるんだろうなあ<かくいう私も版下は長らく見てない&使ってないです(^^;;
そういえば、むかし同じような疑問をもったなあ、などとも思いつつ。
この方、今度印刷屋さんに質問してみよう、とも書いているので、ここに自分なりの回答を書いておく(余談の方が多いという説もあるが(^^;;)。
印刷屋さんから回答があったら、それと比べてみたい。抜けてる視点が多々ありそう(^^;;

>なぜ版下が消えるのだろう??
その営業さんが言った「もたない」というのが、「保たない=劣化する(長期保存ができない)」と、「持たない=持ち続けない(廃棄する)」のどっちの意味だったのか不明だが、どっちにしてもウソではない。長期保存はされていないことが多いのだから。

版下をすべて、ずーっととっておくとどうなるだろうか? 当然、場所ふさぎだ。保存コストは誰が持つのかという問題にもなる。もしも保存した結果、汚損、ホコリ焼けや印画が薄くなるなどの品質劣化が生じたら、その責任は誰が? 劣化に気づかずに使い回したら、それが印刷まで回っちゃったら、誰の責任になるだろう?
契約にそういうことが織り込まれていなかったら、印刷会社が責任追求されちゃうかもしれない。
同時に、そういうこと(汚損や劣化、保管場所)を気にしなくてもよいのがデータの利点でもある。
というわけで、特別な場合を除けば、使用後、一定期間を経過した版下は、どこでも廃棄している。に違いないと思う。

版下から作られるフィルム(製版フィルム)やプレート(刷版)も、同様に廃棄されるに違いない(もっと保存期間が短いだろう。特にプレートは、それが印刷機にかけられる……んだよね? とするとインキまみれになるわけだし)。
ただし、書籍などで増刷が見込まれていれば、印刷会社かどっかで、フィルムかなんかを長期保存してたりすることもあるはずだ。まあ、それはきっとそういう契約になっているのだろう。

三省堂が、活版で国語辞典『大辞林』を作っていたころ(と言ってもそう古い話ではない。90年代だと思う)、組み上げた活字をずーっと社内にとってあるので「床が抜けそうで困っている」と聞いたことがある。そうやって、「特に長期で再使用が見込まれる場合」は、出版社が保管することもあるわけだ。

自然に消滅するわけではないので、再利用したいのは当然だ。方法がないわけではない。
まず、版下入稿したものであれば、それが「原稿」なのだから、刷了後、戻してもらうようにお願いすることもできる。というよりも、「原稿返却」はふつうの工程だよな。いまどきはそうでもないか?
データで入稿して先方で版下出力しているのであれば、版下は先方の財産なので、どっかよそに流用されるなどの不当な扱いでさえなければ、先方の好きにされちゃっても文句は言えない(^^;;
だけどそれでも、つきあいの程度によっては「版下さあ、モノによってはそっちにとっといてくれる?」とか「終わったら、版下こっちにくれないかなあ?」とか言うことはできるだろう。当然ながらコストの問題や、保存期間、管理体制、どれでも全部とっておくのかなどは話し合う必要が出てくるだろうけど(手間もお金もかけて作った版下をタダで引き揚げられて、それをヨソに入稿されたりしたら、版下を作った方はタマラナイ。だけど、「とっておいて」ということであれば、「次もアナタのところに発注するからね」ってことにもなる。だったらサービスでとっておいてやろう、ってこともあるかもしれない。ただし、この場合、とっておいた版下を「修正してね」ってのはルール違反だろうな・笑)。

版下つうても部品なのか、フィニッシュを経ているのかでまた違うかもしれませんね。
部品の方が流用される可能性高いから、保管されるかもしれないですね。つうても印刷会社にではないだろうけど。
大企業や大きなイベントなんかだと、ロゴやマークの印画紙というか清刷り(きよずり)が配布されたりもしていましたよねー、色指定つけてさー。あれも版下(原稿)として使用されるんですが、じゃんじゃん配布されるということは、やっぱり版下って消耗品という位置づけだったのでしょう。
いまはEPSデータなんかで配布されることが多いので、これも見かけなくなりましたなー(^^;;

Posted: 火 - 2月 8, 2005 at 10:02 午前            


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