投稿:匿名レポート 第3信

[α-229867-a,b]続き

 

 1987年9月23日。 α-229867file-aに基づき、当研究所は、大掛かりな観測態勢を敷いた。
 前年、04:32〜 05:18にかけて、地磁気異常及び、空電現象を観測した東北32無人観測所(焼石岳山頂)、36無人観測所(稲庭)には、超音波、精密地磁気変動、歪み、電磁波、放射線の各観測装置とその人員を、VTRにUGP(unidentified graphical phenomenon)が記録された41観測所(南郷)には、上記に加え、アナログ広指向VTR、デジタル単指向VTR、赤外線CCDカメラ、PCMレコーダーなどが設置された。そして、発光現象と人間の消失が報告された82観測所には、それらすべての機器とともに、観測要員3名とpsyエージェント、ブリュッセルのオブザーバーの計5人が配置された。また、82観測所から600m隔てた皆瀬山東麓には、山頂と同様の規模の観測機器と、山頂からのデータをプールする通信設備が設置された。この観測態勢に動員された研究所スタッフは、総勢28名に及んだ。

 87年9月23日、04:22'38"、まず32観測所で地磁気及び歪み計の変化、さらに激しい超音波変動を観測。それは、ちょうど焼石岳山頂に朝日が射し始めた瞬間だった。さらに、36、41の各観測所でも同様の変化を捉えた。そして、04:22'41"、82観測所で、じつに、他観測所に比べて、25万倍の変動数値を記録する。さらに、数秒後には、各観測機器の許容量をオーバーして計測不能になり、同時に、山麓への転送が途切れる。このとき、山麓観測員は、皆瀬山全体が青白い光に包まれるのを確認した。因みに、この山麓観測地点では、何ら数値の異常は観測していない。他観測地点でも、数値の異常が認められたのは、環状列石の内側だけに限られていた。
 04:28'18"、32,36,41の各観測地点で、変動の最高値を記録する。このとき、前年にUGPを観測した41観測所で、アナログ広指向VTRが、要石上に浮かびあがる四人の人影を収録した(この要石は、アラハバキ信仰の聖遺物とされ、われわれは、その信徒たちの妨害にあって観測装置を設置することができなかった)。
 皆瀬山麓の観測地点では、41観測所からの連絡で、観測員二人を山頂に急派した。この二人が山頂に到着したのは、変動ピークの16分後だった。このときは、すでに発光現象は終息していた。
 山頂に達した観測員は、まず、山頂地域の異常な暑さに気づいた。さらに、焼けこげた観測機械を発見したが、そこにいたはずの5人の姿は認められなかった。観測員が到着してから2分後、突然、空間に薄い影が出現する。それは、psyエージェントだった。

 苦しむpsyエージェントは、非常に高い電磁波を帯び、観測員たちは電磁シールドを施してからようやく救助した。その体は、半透過光性となっており、後の分析で、分子密度が1/3になっていた。
 研究所に収容されたpsyエージェントは、体を構成する分子密度が不規則に変化する状態を見せながら、8日後に消失した。

 以下は、収容から3日後と5日後の要体が比較的安定したときに記録された談話である。
 α-229867file-b-voice-1
「それは、突然起こりました。
 後頭部に蜂の群れがたかったような非常に不快な振動を感じたかと思うと、頭が割れそうに痛みました。それはちょうど、サイコキネシスの実験中に起きる頭痛に似ていましたが、はるかに強烈でした。
 私は、psyエージェントとしての任務から、痛みをこらえ、目を開けてあたりを見回しました。すると、あたりは青い強烈な光に満ち、私以外の四人は、すでに消え去る寸前でした。足元を見ると、そこには何もなく……いえ、そこも光りで満たされていて、私は宙に浮かんでいるようでした。
 なぜ私だけ助かったのか? それは私が、日ごろpsy訓練を行っていたためではないでしょうか。よく、サイコキネシスを行っていると、自分には制御しきれないエネルギーの浸潤を感じることがあるんです。訓練されたpsyエージェントなら、咄嗟に自分のエネルギー放出を閉じて、外部からの浸潤を防ぐようにします。そのとき、私は、無意識にその回避を行ったのだと思います。しかし、あのエネルギーは、想像を絶するほど強力でした。私には、その浸潤を阻止することはできませんでした」
「どこかへ行った、いや行きかけたことはわかります。私以外には、ハンス(ブリュッセルのオブザーバー)が、同じような抵抗を行っているのがわかりました。しかし、彼はサイコメトリーの専門家だったので、バリアを張ることに慣れていなかったのでしょう。ただ、最後の瞬間、私は、彼の声を聞きました。“Υ十字から光りが溢れる”と、彼は叫んでいました……」

(97.12.15. 0:15AM 着)

 前へ 

 MaCroSoftのホームページ asahi-netのホームページ