2004.4.23/4.27

本はどうやって作るか −中学生の総合学習の時間のために−

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2.)企画を立てる

企画というのは、本の設計図、計画書です。

本を作るときには、何人もの人が関わることが珍しくありません。そのとき、みんなでゴールを目指すためには、誰もが同じゴールをゴールだと思っていなければなりません。みんなでゴールを確かめられないと、一人だけ、あるいは、みんなが全然別の方向に走り出してしまうこともあります。ですから、できるだけ具体的に本がイメージできるようにします。

仕事で本をつくるときには、企画を先に立てる必要があります。確実によりよい本にするためですが、ゴールが見えていない仕事は、企業では認められないからでもあります。

でも、学校で本を作るのであれば、どんな記事を載せるかだけをなんとなく決めてから、あるいは、取材だけは済ませてしまってから、それをどういうふうにまとめるか細かいことを考える、という順番でもいいでしょう。

企画と言っても、なにも別に難しいことをするわけではありません。「どんな本にしようか」という下書きを作るようなものです。

ただ、はじめてのことをやるときには、うまく想像がつかないので、下書きを作るのも大変かもしれませんね。「大変だ」「もういやだ」と思ったときのために、ちょっとこぼれ話を紹介しましょう。

企画は大変だけど、やりがいがあって楽しい

企画がうまくできていなければ、その本の失敗は約束されてしまったようなものです。うまくできていない企画とは、狙いがはっきりしない、どうしてそうなっているのかが伝わらない(簡単に説明できない)企画です。でも、企画がうまくできただけでは、その本が成功するとは限りません。実際に本にするまでには、まだ長い道のりがあり、そのどこに予想外の失敗が潜んでいるかわからないのです。

怖いですね。だけど、それだけに、企画はやりがいのある仕事でもあるわけです。

少し元気が出ましたか? だめ? じゃあもうひとつ。

本を作ることを仕事にしている人のなかには、企画がいちばん楽しいという人がたくさんいます。実際に本を作るよりも、こんなふうにしたい、あんなこともやろう、と考える作業の方が楽しいというのです。

そうですよね。あれがやりたいな、こんなことできたらいいな、と考えるのは楽しいですね。企画って、そういう夢を見る仕事でもあるのです(でも、本当にはできないことではダメですよ。少し頑張ったらできそうなことで、まとめましょう。そこはちょっとキビシイ(^^))。

さて、企画では、具体的には次のようなことを考えます。

★企画作業を後回しにする場合でも、遅くとも記事を書きはじめる前には必ず考えて、決めておきましょう。

a.仕様を決める

これは、先生が決めることになるのかな? 先生が決めることと、生徒が決めることをはっきりしておくといいかもしれませんね。

  • 全体のページ数
  • 判型(誌面=紙の大きさ)
  • 色数(カラーにするかどうか。一部のページだけカラーにすることもある)
  • 紙質(カラーにするなら白い厚めの紙の方がいいけど、白すぎると目に痛い)
  • 予算(^^)
  • スケジュール(いつ刊行するかを決めると、いつまでに印刷所に入れるかが決まりますね。これが印刷入稿の〆切になります。それまでに終えなければならないことは、また後で)

とくに「判型」と「色数」は、後述する「ツクリ・スタイル」と密接に関わってくることがあります。でも、ほかの事は後で決めてもいいでしょう。

仕様ってなに?

仕様というのは、やさしく言うと「お金に関係する事」、具体的には「紙やインキはどうするか」ということです。難しく「物理的・経済的な制約の確認」と言った方が大人にはわかりやすいでしょう。

仕事でする本づくりの場合は、このときに「製本方法(簡単にいうと紙の綴じ方です)」や「表紙は別刷りにするのか」とか「見返し(表紙と本文用紙の間に入れる紙)の有無」など、もっと細かいことまで決めます。

仕事での本づくりの場合は、「調整なのか仕様変更なのか」が問題になる事があります。調整ならば慣例的には予算の範囲でなんとかしなければなりませんが、仕様変更なのであれば追加請求が発生することになるからです。仕様を決めるという事は、それだけ重大な事でもあるのです。

b.記事構成(目次立て)を決める

b-1. 目次

目次を書くには、最低限、次のことが必要です。

  • 何についての記事を載せるか(タイトル、テーマ)
  • 記事の順番
  • それぞれの記事の分量(ページ数)

どれが欠けても目次は作れません。そして、この目次を決めないで本を作りはじめると、ページが足りなくなったり、余ってしまったり、ということが起きます。また、記事が出来上がった順に本に入れて行ってしまうと、この本で一番読んで欲しい、中心にしようと思う記事のページが少なくて後ろの方になってしまったり、ページが足りなくなって入れられなくなってしまったら、なんのために本を作るのかがわからなくなってしまいます。

ということは

  • どの記事が大事な記事かを考える
  • 大事な記事ほど前の方に置く
  • 大事な記事はページを多くする
  • 読みやすい記事を前の方に置いたり、ページ数を増やす
  • 見栄えのする記事を前の方に置いたり、ページ数を増やす

ということになります。

最後のふたつは、手に取ったときに面白そうだな、と思ってもらえるようにする、読んでもらいやすくするための工夫です。

なにが大事な記事かは、どうやって決めたらいいでしょう。

いくつかの方法があります。

  • 自分たちの狙いにちょうどいい場所や相手とスタイルを選ぶ
  • 現地の人や、詳しい人、よく利用する人などにおすすめを聞いて選ぶ
  • どれにするかアンケートや投票をする(^^)
  • どの資料にも必ず出ているものや場所を選ぶ(定番というヤツです)
  • どの資料にも出ていないものや場所を選ぶ(穴場とかスクープってやつですね)

お店で売る本を作るときには、「穴場集」や「定番集」「人気ランキング」などを作るのでない限り、これらの組み合わせで選んで行くことになるでしょう。たとえば、「定番」ばかりではありきたりだし、狙い優先や「穴場」狙いばかりでは、もうひとつ役に立たないからです。

もちろん、一冊のなかに「ぼくらのオススメ」も「穴場情報」もあるなんていうのもOKです。そのときは、どちらをプッシュするのか、それとも両方とも同じ重要度にするのかも考えましょう。

目次と台割、進行表

この目次づくりの作業を、プロの場合は「台割(だいわり)づくり」と呼びます。本を印刷する人は、この台割を見ながら印刷が間違っていないかを確認します。進行を管理する人は、台割を見ながら「このページに必要なものは全部そろったな」「このページはここまで作業が進んだぞ」と確認したりもします(そのために、台割を予定表や進行管理表を兼ねたかたちに作る事もあります)。

「台」というのは、印刷するときのページの単位です。一般的な本は、1枚の紙の片面に8ページ、両面で16ページを刷ります。これを折って切って綴じると16ページになるようにするですが、この16ページ分をひとつの単位として「1台」と呼びます。「印刷機1台分」という意味から始まった言葉だ、と聞いた事がありますが本当のところはわかりません(^^;;

で、この「台」に記事をどのような配分で「割り付けて」いくかを決めるものだから「台割」なのです。

さて、資料を読んだだけで、目次が作れるでしょうか? 作れればいいんですが、なかなかそこまではできない場合も多いことでしょう。そこで、次のページで、b-2「企画書」にはなにが必要かを考えることにしましょう。


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